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【映画評】ザ・ロード(THE ROAD)

2010年08月11日 00:38

ピューリッツァー賞を受賞した同タイトルが原作。
原作者であるコーマック・マッカーシーは、
最もノーベル文学賞に近い作家だと言われているらしい。

しかしながら、エンタメ性をもった作家としても僕は評価している。
アカデミーの4部門を取った『ノーカントリー』の原作『血と暴力の国』でも、
シガーという悪魔的キャラクターを創造し、バイオレンスでもあり、
ノワールでもある傑作ストーリーを生み出した。

一方、『ザ・ロード』である。
こちらは派手さはないが、
圧倒的な緊迫感をもった終末ものとして書かれていたところで、
映画は果たして……と思ってた。

記述が「純文学」的だし、
映像化はできるのだろうか、と。

結論から言うと、杞憂に終わった。

話の骨組み自体は、原作をほぼ踏襲している。

しかし原作にないもの。

つまり、役者であったり、音楽であったり、
具体的な映像だったりが、まったく隙のない物語を紡ぎ出している。

ヴィゴ・モーテンセンとコディ・スミット=マクフィーが演じる親子は、
大変な旅を続けるわけだが、救いのない世界の中で、
お互いが唯一無二の心を預けられる存在と描かれている。

ドラマ的には、子供を産みたがっていない母親に、
無理やり産ませた子供である。
だからこそ、父としても責任があるという背景もある。

二人の絆。

超人的な精神力を持つキャラクターを演じさせたらピカイチのヴィゴと、
天才子役のコディ・スミットは、見事に父子を演じていた。


音楽はニック・ケイヴが担当している。
強烈な解釈のブルース(&パンク)で知られているが、
今回の映画音楽でも、奇妙な情念が感じられる曲が付けられいる。


また、直接的な描写はないけど、
「食人」には完全に戦慄させられた。

ここの部分は完全にホラーだ。
心底怖く感じた。

同じ終末的世界観の『ザ・ウォーカー』にも「食人」らしきものが出てくるが、
こちらは主人公が座頭市的な超人と描かれているため、
本質的には危機感がない。

しかし今回の『ザ・ロード』の親子は、
何も持たぬ弱い存在と描かれているため、
ちょっとしたことでも、「死」が感じられてしまう。

だから「食人」をする悪人たちと対決するどころか、
逃げまわるのが精一杯。

持ってるピストルは、自決用。
カッコ悪いし、惨めだ。

しかし、これが普通の人間だろう。
僕もそうだ。

何も持たない。

人を殺し食すのに何の痛痒も感じない人間に、持たざるものは圧倒的に弱い。

しかしそれでも、人間を人間たらしめる心に宿る「火」を守らなければならない。

劇中の会話で、、、
「あの男は善き者ではなかった。悪者には気をつけないといけない。俺たちは火を運んでいるのだから」
「火って何のこと?」
「心に宿る火だよ」
「僕たちはこれからもずっと善き者?」
「ああ、ずっとそうだ」
といった、親子のやり取りがある。

「火」は「良心」と解釈されるんだろう。

そして何もこの映画に限った話しではない。

現代に生きている僕も、心に宿る「火」を持たなければ、
あっという間に「食人」も厭わぬ者に成り下がるに違いない。


……以上、雑多な感想になってしまったけど、
自分が生きている意味も問われている気がして、
非常に切実な映画だった。

こういう映画は年に、そうあるもんじゃないよ。



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